47.例えば彼女と風邪っぴき
彼女は雨に濡れるとすぐに風邪を引く。体が弱いというわけではないらしいのだが、体調を崩す日が雨の次の日に重なることが多いらしい。
昨日雨が降ったからか、ミサキは今日の学校を休んだ。
『学校どうしたの?』
僕は休み時間中に彼女にメールを送る。
『風邪引いた』
『具合はどう?』
『微熱。大したことないよ』
『学校終わったらお見舞いに行くね。何か食べたいものとかある? 買ってくよ』
『ようかん』
『解った』
彼女の風邪が軽いようなので、僕は安堵してこの日の授業を受けた。
学校が終わると、僕はお見舞いとして和菓子屋で羊羹を購入しミサキの家に向かう。ミサキの家に到着し、インターフォンを押した。
返事はない。ミサキは寝ているのだろうかと携帯を取り出したとき、突然ドタドタと誰かが走る音がして、勢いよくドアが開いた。
「アキヒト……くん?」
ミサキの表情には焦りが浮かんでいた。恐怖に怯えるように口元をゆがめ息を粗くして、目を丸くしながら僕を見ていた。しかし突然、ミサキのこわばっていた表情が糸が解けるように緩み、力なく微笑んだ。
「よかっ……た」
その場でミサキが崩れ落ちた。僕は慌てて彼女の身体を支える。
「ミサキ! ミサキ!」
呼びかけてもミサキに反応がない。僕は自分の血の気がサァと引く音を聞いた。あまりに予想外の辞退にパニックに陥りかけたが、ここで僕が混乱したら誰がミサキの面倒を見る! と自身を叱咤し思考を落ち着かせる。
メールでのやり取りのあと熱が上がったのだろうか。それとも熱は、大事に至る病気の予兆だったのだろうか。緊急車両を呼ぶべきか、応急処置をする必要はあるのか。僕が学校を抜け出して看病に来ていればこんなことにはならなかったのにと後悔の念が僕を責める。
僕は恐る恐る彼女の額に手を当てた。僕は額から伝わってくる熱に驚きを隠せなかった。
「……熱は特にないよね」
おそらく平熱だった。ミサキの荒かった息も、今ではスースーと寝息のような音を立てている。
「もしかして、寝ぼけてただけ?」
脱力した。抱えてたミサキをすべらせてしまうかと思ったくらい力が抜けた。本当に寝ぼけていたのなら、なんと迷惑な寝ぼけ方なんだろうか。
もう一度ミサキの体温が平熱であることを確かめてから、頭を抱えたい衝動を押さえ、ただ平穏に寝ているだけのミサキを家の中の布団まで運んだのである。
この事は、後で笑い話として使わせてもらおう。
昨日雨が降ったからか、ミサキは今日の学校を休んだ。
『学校どうしたの?』
僕は休み時間中に彼女にメールを送る。
『風邪引いた』
『具合はどう?』
『微熱。大したことないよ』
『学校終わったらお見舞いに行くね。何か食べたいものとかある? 買ってくよ』
『ようかん』
『解った』
彼女の風邪が軽いようなので、僕は安堵してこの日の授業を受けた。
学校が終わると、僕はお見舞いとして和菓子屋で羊羹を購入しミサキの家に向かう。ミサキの家に到着し、インターフォンを押した。
返事はない。ミサキは寝ているのだろうかと携帯を取り出したとき、突然ドタドタと誰かが走る音がして、勢いよくドアが開いた。
「アキヒト……くん?」
ミサキの表情には焦りが浮かんでいた。恐怖に怯えるように口元をゆがめ息を粗くして、目を丸くしながら僕を見ていた。しかし突然、ミサキのこわばっていた表情が糸が解けるように緩み、力なく微笑んだ。
「よかっ……た」
その場でミサキが崩れ落ちた。僕は慌てて彼女の身体を支える。
「ミサキ! ミサキ!」
呼びかけてもミサキに反応がない。僕は自分の血の気がサァと引く音を聞いた。あまりに予想外の辞退にパニックに陥りかけたが、ここで僕が混乱したら誰がミサキの面倒を見る! と自身を叱咤し思考を落ち着かせる。
メールでのやり取りのあと熱が上がったのだろうか。それとも熱は、大事に至る病気の予兆だったのだろうか。緊急車両を呼ぶべきか、応急処置をする必要はあるのか。僕が学校を抜け出して看病に来ていればこんなことにはならなかったのにと後悔の念が僕を責める。
僕は恐る恐る彼女の額に手を当てた。僕は額から伝わってくる熱に驚きを隠せなかった。
「……熱は特にないよね」
おそらく平熱だった。ミサキの荒かった息も、今ではスースーと寝息のような音を立てている。
「もしかして、寝ぼけてただけ?」
脱力した。抱えてたミサキをすべらせてしまうかと思ったくらい力が抜けた。本当に寝ぼけていたのなら、なんと迷惑な寝ぼけ方なんだろうか。
もう一度ミサキの体温が平熱であることを確かめてから、頭を抱えたい衝動を押さえ、ただ平穏に寝ているだけのミサキを家の中の布団まで運んだのである。
この事は、後で笑い話として使わせてもらおう。
